日本における子ども虐待への対応は、<家族維持・福祉的>対応から<家族介入・司法的>対応へと移行しつつある。<家族維持・福祉的>対応においては、保護者との対立・強制を伴った介入的対応を出来るだけ避け、自発的な家族の再統合をめざすが、そのために虐待に有効に対応できず最悪の場合、虐待死に至るケースが近年増加しているからである。しかし親子分離のケースの大半において子どもは施設入所となるが、虐待を受けた子ども達においてはアタッチメントの欠如という問題があり、施設入所は親子分離の際の適切な措置であるのかという疑問が生じる。本研究ではこの問題に焦点を絞り、児童養護施設に対してアンケート調査を行った。調査対象は全国の児童養護施設から系統抽出法により抽出した100施設で、そのうち33施設から回答を得た。調査項目は問1、入所児童数およびその年齢構成、問2、養護問題発生理由別児童数、問3、入所児童のうち被虐待経験を持つ子ども達の抱える問題(自由記述)、問4、心理療法を行う職員の活動内容(自由記述)問5、小規模グループケアの活動内容(自由記述)、問6、入所児童と家族との交流について(形態別人数)、問7、「家族支援専門員(ファミリーソーシャルワーカー)」の活動内容、であった。 回答結果の分析は以下のとおりである。児童養護施設の入所児童の40%は被虐待児であり、平成15年度の厚生労働省の児童養護施設等入所児童調査と比較し近年における入所児童に占める被虐待児の割合の増加が確認できた。またこれらの子どもたちにおいては、「反応性愛着障害」(DSM-TRの診断基準による)の行動特性を示す者が多かった。これらの子どもたちに対して心理療法がおこなわれていたが、現在の心理療法は「トラウマ療法」が中心であり、愛着障害に対して有効であるか疑問である。むしろ小規模グループケアに可能性が予測される。
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