研究テーマに関連する文献を収集し、次年度に実施予定の質問紙調査を遂行するにあたって考慮すべきボイントを洗い出した。 当初、今年度実施を予定していた予備的ヒアリング調査は、諸般の事情により実施できなかったが、研究代表者が参加している他の調査研究で得られたデータにより、職業資格取得のタイミングを分析した。その結果、教員免許や看護師免許のような学校教育を通じて取得する職業資格は、9割前後の人が学齢期に取得しており、学卒後の職業経歴の形成過程で資格を取得して当該の職業に就くケースはごくわずかであることが判明した。他方、ホームヘルパーのような、必ずしも学校に通学することなく講習の受講などで取得できる資格の場合は、資格取得年齢の幅が広く、職業経歴の中途で取得するケースが相当数存在することが判明した。 以上のことが示唆するのは、職業資格の中でも、学校教育と密接に結びついた資格とそうでない資格とでは、職業経歴に与える効果が異なるということである。したがって、よく喧伝される「これからは、学歴社会から資格社会へと移行していく」というのは、実現性のうすい言説であるように思われる(阿形 2000)。ここで明らかになったことを踏まえて、次年度は質問紙調査を実施する予定である。
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