ヴェーバー、ラートゲン、ラートゲンの門下生らの著作から、明治期日本および第二帝政期ドイツの思想状況を探った。また参照すべき未公刊史料や文献の所在を、ドイツの公文書館、図書館に問い合わせた。これにもとづいて、平成18年8月に、マールブルク国立公文書館、カールスルーエ総合公文書館、ハイデルベルク大学図書館、ハイデルベルク大学公文書館を訪問し、資料の蒐集・分析をおこない、多くの新知見を得た(本年度の渡独調査は一回とした)。とりわけ、ラートゲンは、帰国前後において、日本の新しい政治構図の問題性を認識しており、特に伊藤博文を中心とした寡頭制支配が確立したことを見届けるとともにこれを見限ったこと、そしてこのことが彼の離日理由の主要な部分を占めることを確認した。これは、ラートゲンのような自由主義的ドイツ社会科学者の目から見たとき、日本の新体制がどう映るのかを如実に物語っている。平成18年9月および平成19年2月には、国立国会図書館憲政資料室において、阪谷芳郎文書、伊藤博文文書、青木周蔵文書他を調査し、ラートゲンとその門下生との知的交流、および当時の政情・日独関係について考察した。 上記渡独調査において、ラートゲンと、義兄グスタフ・シュモラー、プロイセンの文部官僚フリードリヒ・アルトホフ、ハイデルベルク大学の同僚マックス・ヴェーバーとの関係にかんする調査を実施し、これにもとづく論文を佛教大学『社会学部論集』第44号に掲載した。 マールブルク大学教授エーリヒ・パウアーおよびハンブルク大学教授クリスティアン・シェーアと意見交換した。ラートゲンの日本人門下生にかんする資料を所蔵している個人と連絡を取った。またラートゲン同族会との知遇を得た。現在、同会会員と情報交換を続けている。
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