研究概要 |
この度の研究の目的は計量経済学分野で行われてきた市場均衡のメカニズムを、最新の欧米の組織論や経済社会学での理論研究及び欧米のビジネス・スクールでの企業戦略分野での実証研究を踏まえ、社会ネットワーク分析からの市場均衡モデルの実証研究を試みるものである。経済学においては合理的な参加者の前提に立つ市場モデルを構築してきたのに対し、ネットワーク分析では行為者のネットワーク上での役割や位置が構造・制度などを作り出し市場均衡を生み出すと考える。本年度の実績は、第一に、東京都大田区の産業集積における企業間ネットワークの分析では、下請関係の計量的なネットワーク分析による工業製品の生産におけるマーケットの構造分析を行った。その成果は、代表者とカリフォルニア大学のDouglas White教授との共同研究として、Santa Fe Instituteのワーキング・ペーパーとして公表された。また、これらの研究から派生した産業集積のネットワーク構造分析はCenter on Organizational Innovation, Columbia Universityからの2本の共著ワーキング・ペーパーとして公表され、2006年8月に行われたAnnual Meetings of American Sociological Association(アメリカ社会学会年次大会)ではふたつのセッションで共同研究発表された。さらに、これに関連するネットワーク分析の結果は『組織科学』2007年4月号で代表者の単著論文として発表される。第二に、日本企業のIR活動とネットワーキングに関する実証研究では、特に金融機関担当者、企業IR担当者、M&Aコンサルタントなどとのインタビューを研究代表者が続ける一方で、文献資料の検索と分析、計量データの構築・分析が行われ、継続されている。
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