昨年度の調査結果のひとつ(企業・社員間の調整方法は、交渉可能度により2つに分類できる。すなわち、“当事者間での交渉度が高い"グループ=研究者・技術者等、と"当事者間であまり交渉の余地がない"グループ=生産オペレーター・一般事務職等、の2分類。)を踏まえ、今年度は、"当事者間で交渉度の高い"グループ=研究者/技術者等、について、調整方法と現行制度(企業内制度・法制度)との関係、調整方法とモラールとの関係および苦情の解決状況などについて質問紙票による調査を行った。調査結果は、『企業と個人間のトラブル状況及びその解決方法に関する調査報告書2008』に纏めた。 調査結果(ポイントのみ) 1. 研究者/技術者は、事務職等と異なり、個別化(individualization)が進行している。 2. 研究者/技術者は、集団的調整システムより、個別的調整システムを望んでいる。 3. 労働組合の集団的交渉システムは、研究者/技術者特有の問題の解決には効果的ではない。 4. 有利原則は、研究者/技術者の特有の問題については、一部肯定されるべきである。 5. 研究者/技術者は、労働組合による問題解決より中立的第3者による解決方法を望んでいる。 6. 研究者/技術者においても紛争解決度が高いとモラールも高い。 7. 研究者/技術者の特有の問題の解決においても、A dual coordination system(インフォーマルな解決方法とフォーマルな解決方法)の重層的問題解決システムが必要である。 (総括) 情報化社会・グローバル社会が進展するなかで、企業と個人の関係も大きく変化しているが、その関係を律するシステムおよび規範は法規範も含めて、その変化に対応しておらず、効果的に働いているとは言えなかった。 調査結果をみると、有利原則はその適用について再考を必要としていたし、特に、看過できないのは、若手の研究者/技術者への影響で、年功制も含めて旧来の日本的慣行がマイナスに作用しているケースがみられ、改革が必要であることを示していた。 また、調整システムは、研究者/技術者および企業のそれぞれの立場から満足いくものでなければならないが、この点においても、現行の企業と個人間の調整システムは時代にあってはおらず変革が求められていた。 今回の一連の調査から、単にこれまでのようなCollective Modelだけでは時代の変化や研究者・技術者の要望は受け止め難く、調査結果は、従来のCollective Modelと、これからの時代のIndividual Modelの融合した新たなModelが求められていることを示している。
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