1)社会ネットワークのdynamic processに関するモデルの更なる彫琢、とくに友人形成にかかわる情報の不確実性を考慮したモデル開発を継続しておこなった。これはオランダの研究者との共同研究である。これはすでに2002年に論文として上梓した「不完全情報下のネットワーク形成」(甲南大学紀要、文学編1-27)や2005年の「友人選択過程のメカニズムをさぐる」(佐藤・平松編ネットワーク・ダイナミックス』、勁草書房、93-112で展開したモデルにおけるパラメータの推計を行うことにより、より現実的なものにしていく作業をすすめた。 2)パーソナル・ネットワーク(P・N)とアフィリエーション・ネットワーク(A・N)のソーシャル・キャピタルとしての「地域への関心・関与」に与える影響を測定すべく、ネットワーク調査(調査票調査)の実施の準備ができた。いわゆる「地域力」を構成する要素のなかの「P.N」と「A.N」の重要性をさぐるものである。パーソナル・ネットワーク研究では、個人の選択的なネットワークが主になっているが、アフィリエーション・ネットワークを同時に取ることを通じて、構造的側面を明らかにすることを試みた。 3)もう1つは、「縦断的なホール・ネットワークデータ」の継続的収集である。これまでに実施してきた、日本、オランダの両国にわたるデータの詳細な比較分析をおこなった。そしてこれまでのデータ収集の問題点を改良し、それを日本、オランダ、フランスの3国でおこなう共同調査であり、今年度は更なる調査の「準備段階」であった。とくに、ホールネットワークに関するモデル開発のための「パラメータの推定」が重要であり、このことをとくに意識した調査になった。
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