1)社会ネットワークのdynamic processに関する毛デルの更なる彫琢、とくに友人形成にかかわる情報の不確実性を考慮したモデル開発を継続しておこなった。これはすでに2002年に論文として上梓した「不完全情報下のネットワーク形成」(甲南大学紀要、文学編1-27)や2005年の「友人選択過程のメカニズムをさぐる」(佐藤・平松編ネットワーク・ダイナミックス』、勁草書房、93-112で展開したモデルにおけるパラメータの推計を行うことにより、より現実的なものにしていく作業をすすめた。 2)パーソナル・ネットワーク(P・N)とアフィリエーション・ネットワーク(A・N)のソーシャル・キャピタルとしての「地域への関心・関与」に与える影響を測定すべく、ネットワーク調査(調査票調査)を実施した。いわゆる「地域力」を構成する要素のなかの「P.N」と「A.N」の重要性をさぐるものである。パーソナル・ネットワーク研究では、個人の選択的なネットワークが主になっているが、アフィリエーション・ネットワークを同時に取ることを通じて、構造的側面を明らかにすることを試みた。これは論文『若者層のネットワーク形成とコミュニティ』(科学研究費調査論文集、1-15、2008年3月)として発表している。 3)もう1つは、「縦断的なホール・ネットワークデータ」の継続的収集である。前年に引き続いて、これまでに実施してきた、日本、オランダの両国にわたるデータの詳細な比較分析をおこなった。そしてこれまでのデータ収集の問題点を改良し、それを日本、オランダ、フランスの3国でおこなう共同調査に結びつけるものである。とくに、ホールネットワークに関するモデル開発のための「パラメータの推定」が重要であり、このことをとくに意識した調査になる。日本での調査実施は来年度になる。他の国は共同調査者と打ち合わせしながら実施していく。
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