初年度に続き、Iターン移住を構成する社会学的要件-(1)係累のない土地への、(2)目発的な、(3)地方の小集落への移住-のうち、(1)と(2)の要件に焦点を当てて研究を接続した。具体的には、沖縄県八重山郡に2007年度は集中した。特に、Iターン移住者の比率が大きい西表島(9月)と、その帰りに事前調査をした、移住者だけで自治会が立ち上がった石垣島・川平山原地区(2月)で聞き取り調査をした。重点とした項目は、移住前・直後の社会的ネットワークとその変化と、移住動機形成過程における心象風景の影響である。特に後者では、インタビューばかりでなく、実際に移住動機形成に関与した風景を撮影し、言葉と映像の両面から(1)よそ者性と(2)自発性を考察している。 また同時に、沖縄移住関連の雑誌から移住者データベースの作成を行った。記事からは、基本的属性ばかりでなく、移住者の履歴や地域への関与意欲、永住への意思を重点的に抜き出し入力した。 これまでの成果として、Iターンをめぐっては移住者においては共同性志向よりも視覚的風景を中心としたアメニティ・ムービングの志向が優越している点が浮かび上がっている。しかし、旧来の住民ばかりでなく移住者間においてもこの2つの志向は葛藤の原因ともなっており、景観などの地域財への意味づけやその配分・寡占が重要な問題となっていることも事実である。これらの成果の一部は、2008年中に刊行予定の「『ミドゥルタウン』-地方都市の肖像」に反映されている。 ただ誤算だったのは、データベース作成に使用していたPCのうち1台のHDが故障し、さらに複数のPCを結んでいたネットワーク用の機器の動作が不安定となったため、新たにPCを1台、ハブ1台とケーブル数本を購入する必要が生じたため、現地調査の回数が減ったことである。2008年度は、新規申請時の予定を変え、調査を増やしたいと考えている。
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