本年度はインタビューに2回(1回は旅費を計上、もう1回は学内の旅費を使用し、調査補助者のみ科研費を計上)赴いた.9月は、竹富島と石垣島山原地区の移住者、および石垣市アヤパニモールで地域おこしに従事する商店街関係者に聴き取り調査を実施した.3月は与論島に赴き、石垣島で紹介された移住者3名と与論島で観光に従事する2名にインタビューを実施した.また、沖縄・奄美地方の移住者を中心にしたデータベース作成は、雑誌『沖縄スタイル』などを中心に、補助員の協力も得てかなり進展した.さらに、予算の関係上年度始めに計上はしていないが、近現代の流行歌に現れた'場所'への愛着の分析も同時並行的におこなっており、本年度その一部を研究成果としてまとめた. 本年度は移住者ばかりでなく、移住に関与した地元住民にも聴き取りを行ったが、本研究の主旨である「愛着と地域選択、愛着と風景」との関連で2つの立場をめぐる相違が明らかになったと思われる.特に'場所'を語る上でのボキャブラリーにおいて、移住者からの視点と地元からの視点との相違が明確に出たようである.すなわち、風景的視点で'場所'を語る場合と、風景を離脱した形で語る場合である.ただこうした相違は移住者-地元住民ばかりでなく、移住者間においても、移住動機形成過程に、職業的希望が優先したか居住地選択が優先したかで違いがみられた.こうした意味で、移住者とか地元とかと一概に括れない状況が今日の地域には存在するようである.従って、こうした相違が共同性の措定と非措定につながっている可能性が看取できる.
|