2009年度は2回の聴取調査を予定していたが、予定期間の1つで学科主任業務にトラブルが発生し、結局1回に終わった。場所は宮古島で、2009年9月に赴いた。申請者の旅費は学内の旅費を使用し、調査補助者1名の旅費は、交通費を「その他」で宿泊費を「謝金」で支出したが、データベース作成従事者の「謝金」に調査補助者の分が加わったため「謝金」と「その他」の金額が申請時と執行時とで異なった。 調査対象者は当初7名の予定だったが、先方の都合で6名となった。実施対象者は、下地暁氏(地元FM局・イベント事務局)、佐々木祐一氏(観光案内業)、吉武政彦氏(貝細工)、森田茂氏(旅行社)、岩村和重・智子夫妻(カフェ)である。調査では、帰郷やIターンに至る心象風景の変化を主に取材した。最も有益だったのは下地暁氏であり、東京で成功していたにもかかわらず帰郷に至った過程に、共同性を懐古する剥奪的動機を越えた心情が吐露された。また岩村夫妻からは、始めに沖縄ありきという選択ではすく「碧」という色が移住へ導いた過程が語られるなど成果は多かった。しかし宮古移住者はこれまでの調査対象者とは異なる面も多く、現在分析枠組を大幅に見直している最中である。 また2009年度は、「流行歌にみる'場所への愛着'」も新たな展開をみた。前年度は主に戦前の流行歌を中心に'場所への愛着'を分析したが、2009年度は戦後から現代に至る流行歌(歌謡曲・J-pop)を分析したが、その結果、都市・故郷に加え、戦後誕生した新たな場所ー郊外-が場所愛の対象として浮上した。ただ、都市や故郷に比較し郊外を唄うものは希少で、現在も引き続き唄の収集・歌詞分析に時間をかけている。ある程度の量が集まった段階で、都市や故郷への愛着との相違を比較研究する予定である。
|