補助金交付内定を受けて、研究代表者は国内関係機関と連絡を取り、1970年代以降の記念切手についての資料の閲覧と必要箇所の複写作業を開始した。これと併行して、2006年5-6月に米国ワシントンDCにて開催された世界切手展<WASHINGTON 2006>に参加し、アメリカの日本切手研究グループInternational Society for Japanese Philately(国際日本切手・郵便史研究協会)の特別会合に参加し、在米研究者と情報・意見の交換を行なった。 その成果の一部として、今年度は、1972〜79年の期間に発行された記念・特殊切手に関する基礎資料の集成として『(解説・戦後記念切手V)沖縄・高松塚の時代1972-1979』を上梓することができた。 しかし、同書は、あくまでも当該時期の記念切手についてのデータベースという色彩が濃いため、今後は、同書の編纂作業を通じて浮かび上がってきたさまざまな問題点について、より深く考察していくことが必要となろう。具体的には、(1)1960年代に選挙区対策として発行されてきた"大臣切手"というモデルが1970年代に入って大きく変質していった原因、ならびに、その後の選挙区対策とメディアとしての切手との関係はいかなるものだったか、(2)1970年代、労働運動が郵便事業の現場に与えた影響は大きかったが、そのことは切手発行政策の実務にどのような作用をもたらしたのか、(3)1970年代、わが国では対外関係に関する切手が急増するが、逆に、諸外国は切手発行政策と対日政策の関係をどのように考えていたのか、といった点などが重要な問題点として考えられる。 これらについては、今年度の研究成果を踏まえた上で、今後とも分析を重ね、今後1〜2年を目途に、『メディア史研究』等の学術雑誌において、その成果を発表する予定である。
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