研究概要 |
本研究では,さいたま市内の指定障害者支援事業所(239ケ所)と行政区支援課(10ケ所)を対象とずる「成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査」を実施した(アンケート郵送法による悉皆調査,実施期間平成19年1月10〜31日,回収率50.0%).この結果,(1)事業所より50件,行政区支援課より20件の虐待等ケースが捕捉された,(2)発生場所は「家庭」(約75%)と「福祉サービス」(約15%)が目立つところであるが,あらゆる労働生活場面における発生が認められた,(3)虐待等類型では,ネグレクトと経済的虐待の多さに特質がある,(4)障害者本人の年齢が40歳位を境に,それ以前の年齢段階では母親を主とレた.「実親」を行為者とする児童虐待的構造が,それ以後の年齢段階では男性を主とした「息子」「兄弟」を行為者とする高齢者虐待的構造のあること,(5)虐待等の発生には,障害の程度よりも障害の状態像の不安定さと単親世帯、生活困窮世帯という家族特徴が大きな関連要因であること,(6)支援者職員の虐待等に関する意識は不統一で職員の属性によるバラツキの大きいこと等が,明らかとなった. 以上の成人期障害者の虐待等に関する諸特徴から,さいたま市内の相談支援事業に用いられるアセスメントシートに必要なチェック項目を入れ込んだものを作成し,現在使用している. 以上から,本研究は,包括的な成人期虐待等に関する法制度の整備と地域支援システムの構築課題を一定程度明らかにしたものである.
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