本研究では、まず、文献研究を行いエンパワーメントについての議論を整理した。開発と女性の領域において、佐藤寛(2003)はエンパワーメントについて特に丁寧な議論をしており、研究を進める上での基盤となった。 西ベンガル州の女性の文脈における「エンパワーメント」について考えるために文献研究と並行し、現地で女性のために活動しているNGO・3団体を訪問した。研修を受けている女性たちを観察し、女性たちやスタッフと意見交換を重ねた。それを受けて、本研究では、エンパワーメントを「社会的に周辺化された人々の内在力を引きだし、状況を変えて行く過程」と定義した。また、エンパワーメントは全体的でかつ包括的な変化であり、経済的な領域でのみではなく、他に1)政治的、2)心理的、3)身体的な領域でも捉えられると考えた。女性たちの発言は多岐にわたり多様であるが、「自分(たち)が変化した、強くなった」ことを意味する発言をエンパワーメントの指標として有効であると考えた。 次に、本研究で対象としたサンタル民族の4人の女性保育士や彼女たちが関わる人々(家族や村人たち)に面接による聞き取り調査を行った。その結果、女性たちが自分たちの労働を通して、定期的に収入があること(経済的安定)、教育の重要性を体現していること(ロール・モデルとなっている)、保育園の運営を通して村人たちの信頼を得、頼られる存在になっていったこと(指導力)、夫との関係が共に生活を築いて行くパートナーであること(力関係の変化)などが起こっている事を検証した。
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