地域を基盤にした児童の福祉援助を実践する支援システムを再編しようとすると次のような少なくとも6つの壁にぶつかる。(1)既存機関・組織の各福祉的機能の限界(2)措置制度を主体とした業務の限界(3)人材の質・量不足(4)技量向上のための研修時間不足、(5)人材雇用の限界(6)行政・民間とも他機関・組織、市民支援団体との対等な関係に立った連携経験の少なさ等々である。高齢分野とは異なりで児童分野の課題解決手がかりは八方ふさがりの感がある。 しかし、一つの解決の道筋を鈴木のこれまでの諸調査研究で得ている。それは、一つの課題にじっくり取り組んで成果を見るという手法ではなく、ある地域の特性に合わせ幾つかの課題について同時並行で取り組みながら改善の道筋を探すという手法である。つまり、多様な実践可能なところを同時平行で行うことでその成果が相乗的効果を産み、システミックな変化を促すというアプローチである。 S県、K市というフィールドには重度心身障害児施設以外、児童福祉施設がないが、県児童相談所、県保健所、市教育相談所、県2カ所の少年サポートセンターの1カ所があり、他市には見られない保健・福祉・教育・司法分野の各相談窓口があることが特徴である。更に人口約30万という都市の財政規模、人材資源を念頭に多分野、多専門職.行政、市民支援団体が連携して実践をする可能性がある。今年度は既存の相談窓口等に<出向いてこない>ハイリスク課題が発生しそうな家庭に、家庭訪問による家事、育児サービスを届けるという予防的な試みをする準備段階として多専門職、市民支援団体対象の体系だった研修を実施した。家族支援、連携、ケースマネジメントなどの方法を重点的に組み入れた研修プログラムを実施し、その評価調査をまとめた。次年度は研修を終えた人材が連携して家庭訪問し、アウトリーチ型サービスを届けるパイロット・スタディを実施する。
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