東北農村では、農家後継者の「嫁不足」を解消するために、中国・韓国をはじめとするアジア系外国人女性が農村後継者の「嫁」として流入してきており、日本人の女性(嫁)とともに、それぞれのムラ社会で重要な位置を占めるようになってきている。特に過疎山村では、高齢化した老親の扶養や介護問題が生じ、介護の担い手である中高年の女性に重く負担がのしかかってきている。そのため、今後はますます介護保険サービスの利用者が増加すると仮定される。しかしながら、その一方では、中高年女性が古いイエ制度の規範を共有し、介護サービスを利用するのに、世間体を意識し、施設及び在宅サービスに関わる介護サービスを利用するのに躊躇する可能性も否定できない。今年度は、そうした側面を把握するために、「世間体」スケールを利用し、世間体意識が介護や扶養とどのように関連しているのかを探ることにした。対象者は、(1)最上郡戸沢村に居住している30歳から69歳の介護や扶養を抱えている中高年女性と(2)戸沢村を含む最上郡全域に居住しているアジア系外国人妻である。 調査方法は、(1)については、戸沢村婦人部役員による、配票留め置き調査により、また、(2)については、NPO法人国際交流支援会の協力による配票留め置き調査である。調査期間は双方とも調査が最も可能で、対象者と面接しやすい3月はじめから3月末までに行った。調査票は現在回収中であるが、戸沢村200票、アジア系外国人女性は50票ほど回収が見込まれている。主な調査結果の仮説は以下の通りである。日本人女性及びアジア系外国人女性を比較すると、「世間体意識」に関しては、日本人女性の方がイエ制度の残滓を色濃く残しており、できるだけ介護や扶養は家族内で行おうとしている一方、アジア系外国人妻はむしろ要介護認定を受けた高齢者が家族内にいたときには介護サービスを有効に利用しようとする意識が日本人女性よりも高い傾向がみられると仮定される。
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