研究概要 |
近年の福祉領域では,高い専門的力量を有したソーシャルワーカー養成が急務である。しかしながら,「高い専門性」や経験年数の違いによりどのような力量の違いが存在するのかについては,未だ解明されていない課題である。従って,これらを解明することにより,力量形成を支援するシステムを検討するための素材が得られると考えたため,本研究で取り組むこととした。 具体的には,経験年数の異なる保健医療分野のソーシャルワーカーを対象に,同一事例のいくつかの場面を提示し,自分ならその場面でどのような行動をとるのかを明らかにするアンケート調査を実施した。アンケート調査は,2007年1月から5月末にかけて,A県及びB県医療ソーシャルワーカー協会の会員計645人に対して実施し,有効回答数は81人(12.6%)であった。その結果をアプローチ対象・アプローチ内容・アプローチ方法の三点から比較することにより,ベテランと若手ソーシャルワーカーの力量傾向の差異を明らかにした。 その結果,アプローチ対象では,経験年数が長いほうが多方面への目配りを行う傾向があることや,院内への配慮が働いている点が示唆された。アプローチ内容では,ベテランの方が本人の今後について検討するうえで,病状やリハビリゴールに規定される面が大きいことを認識しながら動いていることが示唆された。アプローチ方法では,ワーカー主導の援助というよりも,あくまでも本人を基点として援助を行おうとしているベテランワーカーのスタンスがうかがえ,ソーシャルワークにおいて留意するべき原則が,若手よりもベテランに近いほど重視されていることが示唆された。 以上の結果について,日本社会福祉学会で報告するとともに論文執筆を行った。
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