本研究では、精神障害者の住居、居住施設、社会復帰施設、及び地域居住環境整備などの居住環境が、精神障害者の心身の状態や生活の質にどのように影響を与えているか、当事者にとって望ましい居住福祉条件とはどのようなものか、に着目し、日本とスウェーデンについての調査を行った。 (1)まず1960年代より精神保健福祉改革を開始し、精神障害者の地域における自立支援に取り組んできたスウェーデンの3つの自治体(ストックホルム市他)を訪問し、県会、各コミューン、社会保健庁、大学等の公的機関の担当責任者から、精神保健福祉改革、精神障害者への生活支援と居住生活に関わる制度と現状、今後の課題と展望についてヒヤリング調査を行った。また、精神障害者の居住しているグループホーム、デイセンター、当事者の居住する一般住居等を訪問し、現場の責任者、担当スタッフ、ソーシャルワーカー、当事者からその生活と居住生活の実態について調査した。スウェーデンでは、脱施設・脱病院の結果、様々な問題が生じ、そのため制度内容等の修正が計画されている。一方、これまで行われてきた地域における居住生活支援は、当事者の心身の状態に安定感を与え、彼らの生活の質に良い影響を与えている。 (2)国内調査として、埼玉、和歌山、帯広、千葉で、長年精神障害者の自立支援の取り組みを行ってきた地域の施設・精神病院を訪問し、精神障害者の居住と生活支援の現状について調査した。日本では、居住の質に関してはまだ改善途上である。 本年度は、スウェーデンと日本の調査を行い、精神障害者の心身の状態を良好にする居住福祉について、より具体的な居住環境条件に焦点を当て、現地機関の協力をもとにそれらの内容を解明し、両国の比較考察を行う。
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