本研究の目的は、精神障害者の地域における自立支援に取り組んできたスウェーデンにおける住居や居住環境の条件を調査研究することにより、精神障害者にとって良好な住まいと居住環境について解明していくことである。本年度は、スウェーデンと日本における精神障害者の居住生活の現状と課題について、これまでのヒヤリング調査、及び関連文献調査の内容、並びにあらたな補充調査を行いそれらの結果についての分析と考察を行った。スウェーデンにおける精神障害者の地域生活の基盤は、地域において精神障害者の生活が可能にならしめる住居やケアの「継続性」である。政府の方針、自治体の取り組み内容、現場での調査内容から、地域生活の継続性の条件としては、良質な住居の提供、在宅サポート、就労支援サービス、余暇活動支援、地域生活支援、これら支援サービスのための地域ネットワークである。また、福祉サービスがイニシアチブをとり、サポートを行っていくが、在宅治療、在宅ケアの継続性、他者との人間関係、社会との関係を持つためにも、住居の立地条件が重要としている。住まいのタイプの特色として、グループホーム、特別支援サービス住宅、サービス付き住居、および一般住居などの異なる居住タイプを用意することで、各々のリハビリやケアに対応している。 精神障害者の地域居住への移行に際しては、生活の「継続性」を可能にする居住保障体制の構築が重要であることが、スウェーデンにおける脱施設・脱病院の実践の調査により明らかになった。今後、日本における精神障害者の地域居住生活の改善に向けて、居住保障とその条件を論じていくことは意義があるものと思われる。
|