本研究のねらいは、認知症高齢者を介護している家族への適切な支援体制について地域をベースに展開していくための包括的ケアシステムめ開発にある。そこで、すでにその実践において優れた実績を示してきているデンマークの「協力モデル」についての分析を行い、日本への適応への可能性についての検討を行ってきた。平成20年9月に再度の実地調査を行い、その検証を行った。デンマーク・スヴェンボー市は人口6万人余りの地方都市であるが、認知症高齢者に関しては独自の政策目標を掲げ、その実践を進めてきた。その目標は、(1)高齢者の生活スタイルの重視、(2)ケア専門職の教育の重視、(3)ショートステイ事業の充実、(4)認知症デイセンターの整備、(5)グループホームへの入所に関する周到な準備と了解、(6)権利代行業務の適正化、(7)家族ケアを大切にしつつ、サポート体制を整備する、(8)認知症ケアに関する知識の共有化などである。こうした目標に基づき、住民、自治体、医療者(家庭医、クリニック、病院)、援助機関(専門職と組織)が、「診断」「判定」「サービス提供(利用)」「評価」を一体的に運営している。そのための基礎作業として、75歳以上の高齢者に対し、年2回の訪問を行っている。この訪問は法律で定められており、高齢者自身が拒否しない限り、認知症に関する知識と対応への技術の研修を受けた職員が高齢者宅を訪問し、認知症の疑いがある場合には、専門職である認知症コーディネーターへ連絡し、家庭訪問による経過観察が行われる。もちろん、高齢者がこれを拒否することはできるが、ほとんどの高齢者や家族は、早期発見・早期対応による効果を理解しており、認知症コーディネーターとともに、早期のうちに専門医の診断を受けている。こうした早期発見のしくみを確立しすいくととが、在宅での認知症高齢者とその家族が納得いくライフスタイルを形成していくことを可能にさせているという事実を確認することができた。
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