本研究の最終年度に当たる平成20年度は、これまでの調査研究の集大成として、ベトナム社会福祉学界の重鎮であるグェン・チ・オアン氏から直接ヒアリング調査を実施した。オアン氏は、すでに、1970年代にソーシャルワーカーの養成に携わり、1992年からホーチミン市のホーチミン市開放大学で、ソーシャルワーカー養成に尽力した方である。氏への調査はこれまでのライフヒストリーを伺うと同時に、ワーカー養成の具体的動向について調査できた。次に、日本ではあまり紹介がなされていないベトナムの高齢者施設への調査を実施した。調査は、仏教系施設であるデユー・ファップ寺併設高齢者施設と国立のタン・ロック高齢者施設で実施した。両者は民間施設と国立施設という特徴を持つが、施設の運営や高齢者への対応に大きな相違があり、民間施設の優位さが浮き彫りになった。第3に、ホーチミン市労働社会大学への調査も実施した。同大学は、ハノイ市の労働社会大学と同様、労働・傷病兵・社会省管轄の大学であり、ソーシャルワーカー養成を実施している。しかし、ワーカー養成にあたっては、ハノイの大学とは異なり、経験豊富で研究能力も高い教員によって養成していることが了解できた。また、社会福祉に対する捉え方においても、先進国の社会福祉理解に相当するだけの理解をした上でワーカー養成にあたっていることが理解できた。 上記の調査内容を含めた事柄は、研究代表者が刊行した『研究成果報告書』に論文ないしレポートという形で掲載した。
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