本研究は日本・中国・韓国における高齢者福祉の地域間格差をテーマにしているが、平成18年度の研究は、そのための基礎データの収集や高齢者福祉の全体としての実態を把握することにその焦点が置かれた。韓国や中国の実態を把握するために現地調査や専門家のヒアリングを行った。中国の場合は、北京(中国を代表する都市)、西安(都市と農村地域を抱えている都市)、貴州(中国で最も所得の低い都市)の3つの地域を訪問し、基礎データの収集、専門家ヒアリング(研究者、高齢者扶養問題訴訟専門の弁護士などを対象)を行っている。韓国の場合は、ソウルと晋州(中小都市)の2つの地域を訪問調査し、基礎データの収集やヒアリングを行った。日本については、介護保険制度を中心に、地域間の格差の実態を把握していく過程にある。研究は、研究計画通り実施されている。 平成18年度の研究実績の公表については、まず、比較研究の方法に関する理論的研究をまとめた。そして、3国の高齢者生活保障における最も重要な社会保障制度である公的年金制度の生成・発展・改革の内容をまとめて、社会政策学会の大会に報告を行っている。前者の研究は、研究方法としての比較研究が持つ長所、社会政策の分野における比較研究の発展、比較研究の課題を提示している。後者の研究は、公的年金の生成・発展・改革を、「政策の国家間学習ないし拡散」(diffusion)とグローバリゼーションの影響という2つの観点から、比較分析を行っている。3国において1990年代以降行われた年金改革の目標がそれぞれどこにあったのかについては、普遍的適用、給付の適切化、財政安定、現代化という4つの要素で比較をしている。
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