昨年度の調査実績を継続検証するため、日本キリスト教社会福祉学会員計442名を対象とした有効回答データ143名(有効回答率は32.4%)に関して、今年度は「キリスト教社会福祉のコアに関する項目」に着眼し、WordMiner(日本電子計算株式会社)による質的分析を実施した。分析の結果、プロテスタントとカトリックの回答に大きなコア(用語)の差は無かったが、「エキメニュカルのため」、「ミッション」、「協働」、「行い」、「罪」、「実現」、「神の国」、「平和の創造」、「命の尊厳」、「倫理」の10項目(各人1項目ずつ回答)についてはカトリック信徒のみに出現した用語であった。また、キリスト教社会福祉のコア(用語)を選定した理由としての高頻度語については、「神」47名(32.9%)、「キリスト教」44名(30.8%)、「キリスト教社会福祉」35名(24.5%)、「愛」31名(21.7%)、「実践」30名(21.7%)、「社会福祉」27名(18.9%)、「人間」27名(18.9%)、「福祉」26名(18.2%)、「聖書」25名(17.5%)、「祈り」22名(15.4%)(上位10項目)の順であった。このことから、キリスト教社会福祉の「コア」とその「理由」の双方に共通して出現頻度が高い用語として、「聖書」と「祈り」及び「愛」の3用語を選択した者が調査対象者に多いことが明らかとなった。このことから、キリスト教社会福祉の独自性と使命の一つとして、「神のことばである聖書とその祈りを通して、キリスト教福祉実践の基本を神と自らに問い、神から受けた大いなる愛を隣人への愛としてわたし(援助者)を通して教えられ共生(利用者や地域社会)のあり方へと転化していく一切のプロセス」が存在すると推察できる。なお、本試論を支持するカテゴリー分類などの資料についても一定の枠組みが整理された。
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