今年度は平成18年度から4年間助成金を受けた最終年度として、研究総括と次に繋ける研究課題の抽出に焦点化した。特に継続したインタビュー調査からキリスト教社会福祉援助観の関係図を再検討し、縦軸に神と私(援助者自身)、横軸に利用者・スピリチュアルと社会制度・社会資源の二元軸を設定した。縦軸と横軸の接点において、自らの援助を聖書に照らして自己覚知する作業が求められる。その過程において、クリスチャンソーシヤルワーニカーには、(1)神と利用者を捉える視点と同時に、(2)神と私(援助者自身)を捉える視点の複眼視が求められるといえよう。また、日本キリスト教社会福祉442名を対象として143名(有効回答率32.4%;カトリック信者9.8%、プロテスタント信者83.9%)から得られたデータの再検討を実施した。前回分析と同様にWordMiner(日本電子計算株式会社)による質的分析を試みた。カトリックとプロテスタントについては、キリスト教福祉のコアを問うた回答に大きな用語.(コア意識)の差は生じなかったが、ミッション、神の国、罪、命の尊厳、倫理などの項目にカトリック信者のみの回答が明らかとなった。カトリック信者からは信仰的側面と倫理的側面を象徴する用語が選出されていることから、今後さらにサンプルの偏りに留意した追跡調査の必要性がある。また、継続分析として、キリスト教社会福祉のコアとその理由の双方から、(1)聖書、(2)祈り、(3)愛の3用語が出現頻度が高いことが明らかとなった。このことからも、現在まで社会福祉の実践の場で自らの生涯を神と人に捧げた先達の実践事例についてインタビューを試み、切実な語りから得られるキリスト教福祉における援助の実際を詳細に捉え、科学する必要がある。この意味からも、今後も継続して量的・質的双方の研究方法から、クリスチャンソーシャルワーカーに内在する固有性を明らかにする必要性がある。
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