都市部では高齢単身世帯と高齢夫婦世帯の著しい増加が見込まれているが、家族による支援基盤の脆弱化とともに近隣関係も希薄化しているため、心理的・社会的に孤立した高齢者の増加が懸念されている。本研究は、このような高齢者に対する支援策の確立に資するため、東京都内の一市部において心理的・社会的に孤立している高齢者をスクリーニングし、その高齢者に対してin-depth interviewを行うことによって孤立高齢者の価値観や態度、ニーズ等を高齢者の側から内的に理解することを目的としている。18年度は以下の課題に取り組んだ。 1.高齢者の孤独感・社会的孤立に関する先行研究のレビュー:孤独感の定義を要約すると「社会関係の不足を感じたことによって生じる不快や苦痛などの主観的体験」で、UCLA孤独感尺度やその改訂版が多用されているが問題点も指摘されており、単に「孤独を感じているか」といった質問で発生頻度を調べている研究も少なくないこと、社会的孤立の定義は「社会関係が不足している客観的な状態」で、社会的ネットワークの測度に世帯構成を組み合わせたものが測度として使用されていること、孤独感と社会的孤立に共通する関連要因としては世帯構成(独居)、ライフイベント(死別)、健康状態があるが、社会的孤立と比べると孤独感の関連要因は結果が一致していない場合が多く、測度や測定法に問題がある可能性が高いことが明らかになった。 2.予備調査の実施:心理的孤独、社会的孤立、および閉じこもりの状態が疑われた高齢者10名に対して面接調査を行い、孤立に至った経過や現在の状態に対する当事者の考え、サポートニーズ等を調べた結果、健康状態の悪化(歩行障害)や友人・家族との離死別、活動していたグループの解散等を期に孤独・孤立に至るケースが多く、新たな社会関係の構築については「わずらわしい」と感じている人が少なくないことがわかった。
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