本研究は、都市部の高齢者の社会的孤立と心理的孤独の特徴を量的・質的調査により把握し、支援策への示唆を得ることを目的とした。量的調査は、平成19年度に、都内一市部に居住する65歳以上の5000人に対して郵送調査を行い、孤立・孤独の存在割合と関連要因を分析した。平成20年度は、量的調査で把握した孤立・孤独高齢者に対して半構造化面接を行い、当事者の考えや要望等を質的に分析した。質的分析の結果、以下の点が明らかとなった。 (1)孤立・孤独に至った過程や理由は、手術・入院を契機とする健康悪化が最も多く、現在は回復していたとしても、入院等で関係が途切れると関係の修復・構築は難しいこと、病気体験や加齢に伴う虚弱化により、社会参加や社会関係よりも「毎日倒れずに生きていること」の方が重要となっていることが伺えた。(2)現状の評価と今後の意向については、「寂しいのは寂しいけど、特に何かしたいという気はしない」「もう歳だから、家で一人でいた方がよい」との言葉が多く、社会関係の縮小を寂しいと思いつつも、受容している傾向が伺えた。(3)社会参加の阻害要因としては、健康悪化の他に、友人の死亡、グループの解散やメンバーとの年齢ギャップ、自分から集団に入っていけない心理的障壁、人間関係上のトラブル等が示された。人生経験の中で、人づきあいに関しては「深入りしない、触らぬ神に崇りなし」との考えに至っている人が多いことも伺えた。(4)孤立防止策については、行政や地域に対して特に要望はないという人が多く、上記(1)〜(3)からも、グループ活動や近隣との関わりは、関係の構築と維持が難しいことが伺えた。しかし、買い物や通院等の場で、店員や話しやすそうな人と軽い会話をすることで孤独感を癒している人が少なからずいたことから、このような弱い紐帯の活用が、都市部の高齢者の孤立・孤独化を防ぐために有効である可能性が示唆された。
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