研究概要 |
本年度は、インターネット行動と攻撃性について、調査【研究3】と実験【研究4】を行った。 【研究3】では、インターネット上に表現された仮想的空間としてのオンラインゲーム(以下OLGと略記)に着目し、OLGの利用が、現実生活における攻撃性に及ぼす影響について検討した。その際、OLG上での行動内容と、OLG利用者側の要因(パーソナリティ、対人的ストレス)についても着目して検討を行った。オープン型ウェブ調査によって得た1477名からの回答を分析した結果、次の三点が明らかとなった。すなわち、(1)OLG上での行動内容は、攻撃行動、対人関係拡張、所属感獲得、規範維持、脱束縛的交流の5側面から捉えられること、(2)OLG上での攻撃行動は現実の攻撃行動を促進するものの、OLG上での規範維持や脱束縛的交流は現実の攻撃行動を抑制すること、(3)社会志向性の高いOLG利用者は、OLG上でも社会志向的に振舞いやすく、個人志向的な利用者や対人的ストレスを強く感じている利用者は、OLG上で反規範的・攻撃的に振舞いやすいことが示された。 【研究4】では、インターネット行動のうち,ポジティブな自己開示行動に注目した。研究4-1ではインターネット(CMC)場面と対面場面(FTF)における自己開示行動を比較した。その結果,(1)CMCではFTFよりも深い自己開示が行われ,抵抗感を感じにくいこと,(2)CMCでは相手に信頼感を抱きにくく,それが自己報告レベルで自己開示を抑制すること,が明らかとなった。研究4-2では,CMCにおいて自己・他者の匿名性が自己開示行動に及ぼす効果を検討した。その結果,(1)他者の匿名性は相手に対する親密感を抑制し,その結果,自己開示を抑制すること,(2)自己の匿名性は不安感の低減を媒介として,抵抗感を減少させること,が明らかとなった。
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