本研究は、分有型リーダーシップ(shared leadership)をチームに導入することが、チーム・コンピテンシーの強化・育成にいかなる効果をもたらすのか、社会心理学と組織科学の観点から明らかにすることを目的としている。本年度は、2年計画の初年度として、以下の研究に取り組んだ。 まず、自律管理型チーム・マネジメントおよびリーダーシップ発達論に関する先行研究のレビューを丹念に行って、それを参考にしつつ、チームによる職務遂行現場のリアリティを十分に反映した概念の規定に取り組んだ。そして、分有型リーダーシップをチームに導入するために、組織現場における質問紙調査やフィールドワークおよびインタビュー調査等を行い、現実的で有効な手順について検討を進めた。職務の現場では、基本的に管理者のリーダーシップを重視し依存する傾向が強いことが確認されるとともに、メンバー間のチームワーク概念の共有(shared mental model)の程度の高さは、メンバー相互のリーダーシップ発揮に対する肯定的評価に結びついていることが明らかになった。 こうした検討と並行して、医療・看護業界および電力業界における研究協力組織との連携したアクション・リサーチによる現場実験を行う準備を進めた。具体的には電力発電の運転チームを対象にして、安全管理・危機対応訓練におけるチームワーク研修によって、その前後で、チーム状況にいかなる変化が生じるかの検討を行う段階に進めている。分有型リーダーシップの行動的側面での測定は、必要とされながら困難とされてきたが、研修の機会を活用し、かつ経験豊かな指導者による評価基準を詳細に設定し、それに基づく測定を行うことで、妥当性と信頼性の高い尺度開発の道が開けてきている。
|