研究課題/領域番号 |
18530486
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
山浦 一保 静岡県立大学, 経営情報学部, 講師 (80405141)
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研究分担者 |
坂田 桐子 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (00235152)
西田 公昭 静岡県立大学, 看護学部, 准教授 (10237703)
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キーワード | 社会心理学 / キャリア発達 / サポート資源 / 大学研究者 |
研究概要 |
本研究の目的は、若手研究者を対象に、キャリア発達上(1)どのような危機(躓き経験による落ち込み)を経験するのか、(2)この危機から飛躍(モチベーション回復)させるサポート資源は何か、そして(3)危機から飛躍に至る心理プロセスの解明を試みることであった。 本年度はまず、インタビュー・データ全40名分について定性的分析を行った。その結果、若手研究者が直面する危機は、大きく「研究上の滞り」「対人的問題」「将来不安・進路の悩み」「経済的問題」「体調不良」に分類できた。このときの主なサポート資源には、対人的資源(指導教員や多様な交流、共同研究への参加)や経済的資源(外部資金獲得)があり、その際の学びもまた重要であった。 この結果に基づき、対人的なサポート資源が、若手研究者の危機からの回復・飛躍に及ぼす影響とその心理プロセスについて検討した。分野と性別を考慮して、30歳代までの若手研究者を対象にweb調査を行った。 分析の結果、若手研究者が危機から飛躍するのは、対人的サポートによって自らの新しい可能性を発見し、研究者としてのアイデンティティを高め、社会に対する否定的な認識を抑制することができたときであった。これらの望ましい心理的反応を引き出しうるサポート源は、分野や性別によって異なった。特に、文系や女性の場合は家族からのサポートが、また理系や男性の場合は内部(指導教員、同じ研究室仲間)からのサポートがそれぞれ寄与することが明らかになった。ちなみに、文系や女性の場合は外部(国内外の研究者)からのサポートが、そして理系や男性の場合は家族からのサポートが、ポジティブに作用する側面をもつ一方で、社会に対する否定的な認識を促す側面も併せ持っことが示された。 本年度の分析を通じて、大学院生を含む若手研究者の躓きに関わる実態を浮き彫りにするとともに、分野別や性別による指導・サポートのあり方に関する示唆を得ることができた。
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