研究概要 |
19年度には、社会的判断に対する誤帰属の影響を調べる題材として、単純接触效果を取り上げて実験室実験を行った。この実験では、人物の写真を刺激とし、刺激の反復呈示が、写真の人物を候補者とした選挙での投票判断に及ぼす影響を検討した。具体的には、魅力度を考慮に入れた上で政治家の写真を20枚選定し、それらをランダムな順序で2回または8回ずつコンピュータ画面に呈示した後、魅力度のつりあった写真をペアにして、どちらに投票したいかを実験参加者に尋ねた。実験条件としては、特別な情報を付加しない標準条件のほか、投票判断を求める段階で、両候補者に政治的スローガンを付加するスローガン条件、出身地・家族構成などの個人属性情報を付加する個人属性条件を設けた。これらの条件設定は、現実には選択の手がかりとならなくても、もっともらしい選択理由と考えられる情報が付け加わると、反復呈示の效果が強く現れるという先行研究(山田・外山,2006)の結果を受けたものであった。結果としては、通常条件では、多く呈示された写真が投票において選ばれやすいという単純接触効果が見られたが、スローガン条件では、同様の効果が見られたものの通常条件よりも強いとはいえなかった。また個人属性条件においては、単純接触効果そのものが不明瞭であった。つまり情報を付加する手続きは、単純接触効果を強める作用をしなかった。これは先行研究と異なる傾向であり、両判断事態の違いを検討する必要がある。 また19年度には、上記の実験室実験のほか、一般人の直観的因果理論に関しても、文献研究と質問紙データの分析を行った。
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