本研究は、社会的判断における誤りやゆがみをもたらす誤帰属のメカニズムを究明するために、その生起条件とそれが判断に及ぼす影響の範囲を明らかにし、更に一般人がどのような要因を諸事象の原因と考えるかという直観的因果理論の解明をもめざすものである。 平成20年度には、前年度に引き続いて、直観的因果理論に関する検討を行うための大学生を対象とした質問紙調査と、刺激の閾下呈示の手続きを用いた実験室実験を行った。質問紙調査では、社会的な現象や出来事(例.事件・事故、結婚・離婚の件)について、それが増加しているか減少しているかの主観的感覚を問い、更にその原因を自由記述させた。その結果、事象の増加・減少の主観的感覚はかなり不正確であり、事象の望ましさの影響を受けることが明らかになり、また事象の変化に対する因果的説明は「現代社会では人間を取り巻く環境・状況が悪化している」という一般的通念に基づいていることが窺えた。詳細は現在分析中であり、さらにマスコミとの接触度等の要因を加味した検討を行う予定である。実験室実験としては、ロシア文字を組み合わせて作成した視覚刺激を、タキストスコープによって閾下呈示するという方法を用いて、単純接触効果の実験を行った。具体的には、各刺激を8回、または2回ずつランダムな順序で呈示し、呈示セッション終了後に、呈示なし・評定のみのコントロール刺激と混ぜて評定を求めた。刺激と条件の組み合わせをランダマイズするための実験を現在まだ続行中であるが、一般的な好悪の判断だけでなく、明るい-暗い、動的-静的などの側面の判断に及ぼす効果も検討する。
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