1. 感情と情報処理における統制的過程の影響を見るため、社会的制約がある場合について実験を行い検討した。これまで実施した研究の結果から、ネガティブ感情状態にある場合の感情改善が自動的な過程であることが示唆された。そこで本研究では、ネガティブ感情時に感情改善以外の目標が存在する状況を扱った。実験では参加者に3つの課題に参加してもらうと告げ、まず映像を呈示し参加者にネガティブ感情を導出した。次に後ほどある課題をひとりで行ってもらう、もしくは他者とともに行ってもらうと告げ、相互作用の予期を操作した。続けて広告の調査として映像広告を呈示した。この広告の前半に流れるニュートラル映像の背景音楽はポジティブもしくはネガティブな感情を導出するものであり、感情改善の予期の操作として用いられた。広告の後半にはニュートラルな社会的メッセージがスクロール呈示された。この広告メッセージ内容の再生ならびに興味の程度などについてたずねた。その結果、相互作用の予期がない場合にに、ポジティブ感情予期群はネガティブ感情予期群よりも興味の程度を高く報告した。この結果は昨年度実施した研究と一貫するものである。他方、相互作用の予期がある場合には感情予期による差は認められず、感情改善の自動的過程が他者との相互作用という社会的制約によって制限を受ける可能性が示唆された。本研究結果は本年の日本社会心理学会第51回大会にて報告予定である。 2. 本年度は研究の最終年度であるため、これまでの研究結果をまとめ、日本心理学会第73回大会、日本社会心理学会第50回大会・日本グループ・ダイナミックス学会第56回大会合同大会、11th Annual Conference of Society for Personality and Social Psychologyにおいて報告し、フィードバックの機会を得た。現在、学会誌への投稿を準備中である。
|