本研究は、互いに関連する以下2つの目的を持つ。 1 高機能自閉性障害を主とする広汎性発達障害における知識構造と、その発達的変化について調べる。 2 統合失調症患者における知識構造衰退の要因について、自閉性障害との比較により考察する。 知識構造の分析については、カテゴリ流暢性課題(Category Fluency Task ; CFT)の発話データに基づいて、心的カテゴリ構造を導出することにより、上記目的を追究する。このため、18年度は、主として同課題のデータ収集・整理・分析に関わる以下事項を遂行した。 1 非定型抗精神病薬により一定期間治療を受けた統合失調症患者、及び対照となる非投与群の統合失調症患者について、語流暢性課題を含む検査データの収集・整理及び分析を行った。 2 自閉性障害を中心とする発達障害児に対して、知識構造を分析するため、語流暢性課題を含め認知機能検査データを収集した。 1については、非定型抗精神病薬投与群でも、実行機能は、非投与群の統合失調症患者に比べ比較的短期間での改善は認められない可能性が示唆された。また先行研究同様、日本語話者患者においては、カテゴリ流暢性課題と文字流暢性課題の遂行低下に日本語特有の課題差が認められた。今後自閉性障害児との比較を行うために、カテゴリ流暢性課題の発話データを基に、知識構造の改善について調べる。2については、18年度に一定数のデータを収集したが、今後さらに、統合失調症患者との知識構造の比較に、十分な人数までデータを蓄積する予定である。
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