本研究は、申請初年度から、互いに関連する以下2点を目的に挙げている。 1高機能自閉性障害を主とする広汎性発達障害児における知識構造と、その発達的変化について調べる 2統合失調症患者における知識構造衰退の要因について、発達障害児との比較により考察する。 本研究では知識構造を調べるための手法として、特に語流暢性検査(Verbal Fluency Task; VFT)を用いている。VFTとは、一定時間に自由発話をさせる課題であり、特定のカテゴリのメンバを挙げさせる課題をカテゴリ流暢性課題(Category Fluency Task; CFT)、特定の文字で始まる語を挙げさせる課題を文字流暢性課題(Letter Fluency Task; LFT)という。 前年度(平成18年度)は主に、統合失調症患者及び発達障害児におけるVFTデータの収集・整理に努めた。これを受けて本年度(平成19年度)は、以下2点を遂行した。 1統合失調症患者のVFTデータを分析し、CFTとLFTの障害度が欧米言語話者とは異なることを見出した。 2発達障害児のVFTデータを分析し、発達障害児におけるCFTとLFTの遂行成績は健常児と異なることを明らかにした。さらに発達障害児において、CFT発話における意味まとまり数や大きさが、広汎性発達障害児と注意欠陥他動性障害児では異なる可能性を見出した。 今後さらに発達障害児のVFTデータの収集を続け、統合失調症患者のVFTパタンと比較する予定である。また、発達障害児のCFTにおける意味まとまりについてより詳細な分析を行い、広汎性発達障害児とADHD児の診断上の区別に有効となる手がかりを発見したいと考えている。
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