研究概要 |
本研究では、「形成的フィールドワーク」(當眞,2004)を方法論として、H18年度に就学前教育現場を軸とした子育て・親育て・コミュニティ育て支援実践システムモデルの素案づくりを行い、H19年度にはそれを活用して、公立保育所を「子育てと親育てを支えるコミュニティとして育てる実践形成型の研究プロジェクト」を本格的に展開することにより、次のような成果を得た。(1)異年齢のかかわりを育む縦割り保育の導入の工夫により、同年齢集団保育では実現が難しかった情緒、意欲、認知、社会性の面での育ちを総合的に支援することが可能になった。(2)異年齢集団での保育カリキュラムの導入と並行して、その意義を保護者と共有するための保護者向けの講演や異年齢保育実践の保護者参観、保護者との懇談及び子育て相談を継続的に実施することで、保育実践の工夫による子どもの育ちと親としての学びを有機的に結びつけ、子育てと親育てを相乗的に展開することができた。(3)このような重層的取り組みを研究者(申請者)と協働して実現していく過程で、個々の保育士は子どもたちや保護者とかかわる力量を高め、現場の課題に応じて実践を形成する力を身につけることができた。さらに保育士の間のコミュニケーションが密になり、コミュニティの仲間としての相互協力体制が充実してきた。現実的かつ具体的で継続性のある子育てと親育ての支援の工夫が求められるわが国の現状の中で、「社会全体で子どもを育てる」仕組みを作っていくための現場の軸のひとつとしての保育所のもつポテンシャルを引き出し高める実践システムを構築しつつ、その形成過程を明らかにした点に本研究の特徴と社会的意義がある。
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