近年の学校心理学への関心の高まりの中で、改めて心理学のー分野としての学校心理学を問い直すことを目的とし、過年度に行った現職教員、学校心理士を対象とする調査結果をもとに、学校心理学を提供する側としての大学教員が、学校心理学をどのようにとらえているかについて、学校心理士資格を持つ大学教員を対象として行った調査研究を分析した。その結果、現在の我が国の学校心理学において手薄で、今後充実させるべき領域として「発達障害とその対応」「コンサルテーション」「学級集団の心理」などがあげられた。また米国の現状等と比較すると、手薄だと評価されていないが、査定領域の充実も必要であると考えられた。一方学校心理学の将来の方向性としては、スクールカウンセラーや特別支援コーディネーターと一本化していくという考えは相対的に少数であり、学校心理学の支援活動を明確化し独自の職域を確立することを目指すとするものが多かった。しかしながらそこでの独自の職域に対するアプローチには、臨床心理学的接近を重視するものと、認知・学習面の指導を重視する方向性とがあり、将来像が明確でないことがみてとれた。さらに、米国での辞典、ハンドブックを分析することで、近年の米国での学校心理学の研究動向を検討した。特別支援教育、コンサルテーションなど我が国で手薄と意識されている部分が重視されているとともに、応用行動分析的な接近及びその基礎となる学習心理学が重視されている。またハンドブック出版年の異なる版を比較することにより、近年計量心理学的方法が重視されているなどの傾向が認められた。
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