研究概要 |
病気と健康の因果性の理解を素朴生物学における生気論的因果の観点から検討するために、本年度は、主に幼児を対象として、病気の抵抗力の理解に関して病気の発病と治癒における活力の役割を中心に実験をおこなった。これまで活力源としてもっぱら摂食がとりあげられてきたが、ここではさらに共感・はげましなどを通じての他者の「力」の取得もとりあげ、これらが病気の治癒に関与しうると幼児(幼稚園の4,5歳児)が考えているかを中心に検討した。その結果次のことが明らかになった。 1.4〜5歳児とも、摂食とともに他者の励ましも病気の回復に影響すると考えていたが、同時に日頃のよい道徳的行動も病気の治癒を早めると考えていた。 2.身体的・生物学的要因(例、摂食)と他者の励ましという心理的・共感的要因との間でどちらか一方を強制的に選択させると、身体的・生物学的要因の方が心理的・共感的要因より重要だとするが、心理的・共感的要因と道徳的要因との間で選択させると、心理的・共感的要因の方が病気の治癒により好ましい影響を及ぼすと考える傾向が見られた。 3.病気の治癒に関する2つの説明、すなわち生気論的説明(例、野菜を食べると力が出てばい菌を追い払える、他の人から元気パワーをもらえるなど)と道徳的説明(例、野菜を食べる子はいい子、友達から好かれるいい子)との問で選択させると、大部分の5歳児は生気論的説明をよりもっともらしいとして選択した。生気論的説明を自発的に構成する子どもは多くないが、提示した説明の中からもっともらしい説明を選ばせるとほとんどの者が生気論的説明を選ぶことが明らかになった。
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