研究概要 |
病気と健康の因果性の理解を素朴生物学における生気論的因果の観点から検討するために,本年度は健康の基礎としての食べ物、栄養の理解の問題を中心に実験をおこなった。その結果次のことが明らかになった。 1)就学前の幼児では,食べ物の種類(野菜類,穀類,肉類,菓子類)にかかわらず,多量に食べた方が,少量しか食べない場合よりも成長が速く,病気にも罹りにくいとする傾向が菓子類を除き,非常に強い。菓子類は他の食べ物ほどこの傾向が顕著ではなかったが,しかし大人のように,明瞭に,菓子類は多量に食べる方が病気にかかりやすいとは考えておらず,少量しかたべないと病気にかかりやすいと考える子どもがかなり多い。 2)食べ物であれば,野菜類,穀類,肉類のいずれでも健康(成長と病気への抵抗力)に同じような働きをすると考えている子どもがいる一方で,同じような割合で,成長へ寄与するのは野菜がもっとも大きく,次が穀類(ご飯),その次が肉類という順番があり,野菜類の(活力源としての)価値を過大評価する子どもがいる。またバランスのよい食事という概念はまだなく,同種のものであっても,おかずの品目が多ければ,少ないときより成長や病気の抵抗力に寄与するという考えが強い。 3)4種類の食べ物のうちから主な栄養素をもつ食べ物を選ばせたとき,幼児は,「血や肉をつくるもとになる食べ物」として肉類を選ぶ傾向はあるが,「食べると力がでてくる食べ物」としては野菜を選ぶ傾向がある(大人では力がでてくる食べ物は炭水化物が多いものとして穀類を選ぶのが普通)。
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