本研究では、子どもと普通の大人が、病気と健康の因果性をどのように理解しているのかを、素朴生物学における生気論的因果の観点から検討することを目的とし、同時に生気論的因果の特徴をより明細化することをめざすものである。 従来のこの分野の研究では、西洋医学の見方を前提とし、もっぱら細菌説の立場から研究がなされていたため、幼児や低学年児童では細菌の生物学的理解はまでできないとの知見が強かった。しかし健康や病気の予防は、人類の生き延びに必須であるという進化論的視点から考えると、子どもが早くから病気や健康についての理解をもっている可能性がある。 そこで本研究では、細菌説とは異なる視点、すなわち素朴生物学における生気論的因果の視点から病気の因果性の理解の問題を検討しようとした。素朴生物学を特徴づけているのは生気論的因果ともいわれており、この因果の特徴をより明らかにしたいと考えたからである。 具体的には、主に次の点について検討することを目的とした。 (1)病気の抵抗力の理解に関して発病と病気の治癒における活力の役割を子どもや大人はどのように理解しているか。 (2)健康の基礎として、また活力源として、食べ物・栄養について子ども(と大人)はどのように捉えているか。 (3)子どものもつ「知識」への「インプット」として重要な位置を占めると思われる、子どもを持つ親は、日常生活場面で子どもにどのような言葉かけや説明をすることが多いか。 (4)普通の大人は、病気の因果性に関してどの程度、どのような形で生気論的な考え方を持っているか。
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