研究課題に関する2つの実験・調査結果を論文にまとめた。また、研究課題を発展させた実験を構想した。更に、これまでの研究成果を体系的にまとめる論文を作成した。まず研究課題に関する実験では、「pならばqだ」と記述できるようなルール命題の前件pに順序尺度的な値や二値的な値を代入した場合に、それに対応した後件qの値がどうなるかを考えさせる活動を代入・対応操作と名づけた。その上で、大学生を対象にそうした操作を行わせることによって、後続の問題場面で既有の誤概念ではなく、教授したルールの適用が促進されるか否かを検討した。その結果、代入・対応操作はルールの適用を促進することが明らかになった。また、操作結果に触れるだけでも適用促進の効果があるという結果を得た。代入・対応操作の効果は、前件と後件の関係把握の促進によりもたらされたことが示唆される。 もう1つは小学校5・6年生を対象に面積の大小判断課題を用いて、問題に数値が記載されていなくても公式を用いることができるか否かを調査した。その結果、具体的な数値が与えられれば面積の算出は可能であるにも拘わらず、数値がない場合には公式を用いることができなかった。公式の変数間の関係のみに着目して答の大小を導き出す操作を「関係操作」と名づけ、関係操作ができない原因を分析したところ、図形の大きさの違いを絶対把握ではなく相対把握しようとすること、面積差は保存されないが面積比は保存される(差の非保存・関係保存)ことの理解が欠けていることが示唆された。 以上の研究を含め、研究期間内に行われた研究に基づき、教科内容を学習者に納得を得させて理解させるために必要な教授要因を体系的にまとめた論文を発表した。加えて、教材の学習者にとっての実体性が納得に関わるのではないかという仮説の基づき新たな実験を構想した。
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