研究概要 |
平成19年度に実施した研究は,絵本の読み聞かせに関する基礎研究に該当する部分であって,大きく分けるならば読み手の行動と,聞き手の行動の詳細なビデオ分析にもとつくものであった。 まず,読み手の行動に関しては読み聞かせ中の行動について視点,発話、発声,身ぶり,表情,視覚呈示,声色という6つの行動指標に設けたカテゴリーに該当する頻度を時間見本法で分析した。5人の読み聞かせ実践者を対象としたところ,共通する特徴が認められたものとともに差異も認められ,聞き手である子どもの理解に与える効果を考察した.次に,20年以上の読み聞かせ経験をもつ熟達した読み手を対象に幼児と大学院生に読み聞かせを行った実験では,共通して観察される行動と,幼児を対象としたときのみ現われる行動が認められた。特に,子どもを対象とした読み聞かせでは視線を頻繁に子どもに向ける行動が認められ,子どもの注意を喚起する意味があることが考察された。 また,聞き手の行動に関しては,5歳前半児と5歳後半児を対象に,視点,発話,動作という3つの行動指標に含まれる各カテゴリーの生起頻度を時間見本法で分析した。その結果,視点に関しては顕著な差はなかったが,発話は,5歳前半児で「絵本の内容に関連した意見表出」や「感情表出」が多く観察され,5歳後半児では「友達と絵本のことで話し合う」行動が顕著であった。これらは3篇の論文にまとめたが,いずれも絵本毎,場面毎に分析しており,絵本のどの場面でどのような行動が生起するのか図で明確に表現することができた。また,研究で設けた行動指標や行動カテゴリーは,今後,読み聞かせ研究を推進していくうえで有効であることが確かめられ,意義あることと考えられる。
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