まず、発達障害児を対象とした読み聞かせ研究からは、健常幼児について検討した研究と符合する結果が得られた。すなわち、発達年齢が5歳以上である発達障害児の場合は、周囲の子ども達を意識し、「他の子どもを見る」行動が多く認められたことである。なぜならば、絵本に集中できていないことではなく、絵本に身を乗り出し、絵本に強く集中しながらも、同時に認められているからである。つまり、絵本を楽しみながら同時に相手の立場や気持ちがわかるようになるという自我の発達の側面を表した行動であると考えられた。一方、発達年齢で5歳に達していない子ども達に関しては、怖かったりはらはらしたりする感情がそのまま言葉になって表現されることが認められた。 次に、絵本の読み聞かせを実践しておられる方を対象としたアンケート調査から、読み聞かせの実践者がもっとも重視していることは絵本の選択であることが明らかになった。また、読み聞かせ実践者が重視することとして、絵本の選択に続いて、読み方のスキル、読み手との信頼関係、環境設定も大切にしていることが明らかとなった。さらに、調査では、ADHD児のような不注意で多動な子どもが読み聞かせる子どもの中にいた場合についてどのように対応するか尋ねた。その結果、導入では絵本への注目を促したり、聞くときのルールが明確にされていた。また、読んでいく過程では、不注意や多動な行動が現われても「無理やり座らせたりせず、関心をもつようになるのを待つ」というように、子どものこれからを信頼しつつ、気にはしているが敢えて注意しないという積極的無視を貫いていることである。読み終わった後で配慮することは、よく聞けたときには、しっかりと褒めるという回答が見られた。
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