研究概要 |
1)近畿地方の保健所に協力を依頼し,3歳健診の場で母親に子ども観,仕事観,育児意識,ライフコース希望などについて,質問紙を手渡し郵送によって回収した。回収数・率は、409部(27.7%)であった。有効回答のうち、一人親家庭を除いたので、分析対象は就労母123人・不就労母258人、計381人であった。2群間で比較したところ、「育児は母親にとって最も大事な仕事である」「母親にとって何よりも大切なのは子どもである」等、「育児の価値の相対化」を問う項目では差があった(不就労母の方が、育児の価値を高く評定していた)。他方、「母親であっても、私は私でありたい」等の「家族の個人化」を問う項目では、両群とも「私は私でありたい」と高く評定し、差はなかった。育児による制約感は不就労群の方が大きかった。子どもへの肯定感情は就労群の方が高かった(NS)。生活満足感は就労群の方が高い傾向にあった。全体として、3歳という幼い子どもを持つ持つ母親でも、就労群の方が子どもや生活全般に対して肯定感が高かった。5年前の調査と比べると、母親の就労がより一般化し、母親自身が子どもを持ちながら就労することに引け目を感じなくなってきていることがうかがえた。「家庭にいて、家事・育児以外のことに専念する」ことを理想とする所謂「新・専業主婦」派は、約12%だった。格差社会と言われる生活の厳しさが反映しているのだろう、前回調査の1/3程度であった。家庭の経済格差が母親の精神的余裕に影響していることも示された。 2)昨年訪問調査したニュージーランドの保育児状について分析を加えた。無償幼児教育が早くから始まっているのに対して、保育所拡充は十分ではなく、都市部では待機児童問題もあるようで、オーストラリアの保育チェーンがシェアを拡大するなど、問題はあるようだ。
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