研究課題/領域番号 |
18530512
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
瓜生 淑子 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (20259469)
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研究分担者 |
杉井 潤子 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70280089)
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キーワード | 育児の価値の相対化 / 母親のキャリア発達 / 新・専業主婦 / 育児支援 / 母親の自立 / 家族の個人化 / 仕事肯定観 / 性役割肯定観 |
研究概要 |
筆者たちは、幼児を持つ母親の育児意識を分析し、育児肯定感と、母親が育児することや子どもを持つことへの評価(例:「子どもを持ってはじめて社会的に認められる」)とを区別して取り出し、後者の質問項目群を「育児の価値」尺度と名付けた。そして、母親の就労等、社会進出が一般化しつつある中で、「育児の価値の相対化」-「育児は育児、私の生活の張りはそれとは同一ではない」と言った区分け・割り切り傾向の進行-を実証する目的で、昨年度、母親調査を実施した。その分析結果を学会発表した(瓜生・杉井、2009)。そこでは、「育児の価値」得点を従属変数として、各尺度得点(「育児肯定感」「性役割肯定観」「仕事肯定観」「家族の個人化」など)について、その高低から2群に分割し、各尺度得点の高低(2)*就労の有無(2)の2要因分散分析を行った。全体的に「育児の価値」の高さが各尺度得点の高さと対応していた。このことは、「性役割肯定観」では予想通りの結果と言えた。他方、「仕事肯定観」では、有職群でもこの得点の高い方が「育児の価値」も高かった。仮説では、乳幼児を持つ母親の就労率が高まる中、「育児の価値の相対化」が進展していると考え、育児肯定感とは異なって、仕事への肯定観が高くなれば育児の価値そのものへの母親の評価は下がっていくと予想していたが、異なる結果となった。高い職業コミットメントを要求される女性の方がむしろ「子ども優先」志向も強いという指摘(松信、2000)が、有職群では関係するのだろうか。或いは、そうした女性にとって、むしろ、自らが日々行う育児の価値を評価することが、仕事や生活の支えになっていることを示しているのではないだろうか。なお、「家族の個人化」については「育児の価値」とは関連が見られず、むしろ、「育児ストレス」の高さとの関連が示唆された。調査の結果は、全体として「育児の価値」が、母親の高学歴化や就労によって低下していく点では仮説を支持する結果を示しながら、就労することを肯定的に評価し得る母親たちにとって、むしろこの時期の育児が、就労を含む生活全体の支えの一因になっている可能性を示唆した。
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