本研究の目的は、保育経験を一斉にスタートさせる幼稚園の3歳児を対象に、3年間の縦断的な観察研究を行い、保育の場で発揮され、はぐくまれる幼児の「ことばのカ」を捉えることにある。研究初年度である本年度は、所属大学附属幼稚園の3歳児1クラス(24名、内1学期末から転出2名)を対象に、園における絵本体験とことばの力、及び家庭での読み聞かせ調査を以下の通り実施し、成果をまとめた。 1.研究経過 (1)絵本体験 (1)保育: (a)観察…06年4月〜07年3月の期間中、登園時から降園時までの観察を計33回行った。保育全般の流れをフィールドノートに記載すると同時に、幼児が絵本とかかわる行動及びことばのカが発揮されると予測される場面(一斉活動の生活報告など)をビデオで撮影した。 (b)保育者への面接…観察後、保育と幼児の様子、絵本環境の設定意図、読み聞かせの意図などについて尋ねた。毎学期ごとに、観察結果を確認してもらい、意見交換を行った。 (2)家庭: 家庭での読み聞かせなど絵本体験に関するアンケートを06年7月に実施した。23名(回収率100.0%)から回答が得られ、分析を行った。 (2)ことばの力: 年度末、保育者と観察者双方が、幼児各人に対して、7つの観点から「ことばのカ」についての評定を行った。 2.主要結果 上記の研究の結果 (1)絵本体験については、園、家庭とも保育者の影響が大きいことが明らかになった。幼児は、園で保育者に読んでもらった絵本を自分でも見ることが多く、そのような園での絵本体験を、家庭で語ることも多かった。 (2)ことばの力に関しては、保育場面で言葉を発することが多い幼児が、必ずしも絵本体験が豊かであるわけではなかった。しかし、絵本をよく読む幼児の中には、特に読み書き能力の高い幼児が含まれており、関連が見られた。
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