研究概要 |
本研究の目的は,保育経験を一斉にスタートさせる幼稚園の3歳児を対象に,3年間の縦断的な観察研究を行い,保育の場で発揮され,はぐくまれる幼児の「ことばの力」を捉えることにある.研究2年目である本年度は,所属大学附属幼稚園の4歳児2クラス(60名,途中転出者2名を含む)を対象に,園における絵本体験とことばの力,及び家庭での読み聞かせ調査を以下の通り実施し,成果をまとめた. 1.研究経過(1)絵本体験:(1)保育(a)観察07年4月〜08年3月に計29回行った.対象は,平成18年度末に3歳児クラスの担任と相談の上抽出した,絵本経験の豊かな幼児と少ない幼児各4名とした.(b)保育者への面接観察後,絵本環境や読み聞かせについて尋ね,学期終了時には観察記録をもとに意見交換を行った.(2)家庭家庭での絵本体験に関するアンケートを07年7月に実施した(回収27名,45.8%).(2)ことばの力:年度末,保育者と観察者双方が,幼児の「ことばの力」について7つの観点から評定を行った. 2.主要結果(1)絵本体験:3歳に引き続き,4歳児も全体的に,園,家庭とも保育者の影響が大きかった.特に幼児が園で自発的に手に取る絵本の7割は,保育者が集団に対して読んだ絵本であり,保育者が絵本と子どもをつなぐ重要な役割を担っていることが確認された.抽出児の絵本体験は,園での友だち関係や遊びの広がりに関連し,いずれの幼児も3歳時に比べ絵本に接する量が減少した.(2)ことばの力:4歳児全般として10月の運動会以降,遊びの中で文字を書く活動が広がり,絵本をみる時も文字を読んだり,作品に自分の名前を書く幼児の姿が目立った.抽出児の絵本体験とことばの力に関して,話しことばとの関連は見いだせなかったが,絵本体験の豊かな幼児の中には文字の読み書き能力の高い幼児も含まれており,書きことばとの関連は見られた.
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