研究概要 |
本研究の目的は,保育経験を一斉にスタートさせる幼稚園の3歳児を対象に,3年間の縦断的な観察研究を行い,保育の場で発揮され,はぐくまれる幼児の「ことばの力」を捉えることにある.研究最終年度である本年度は,所属大学附属幼稚園の5歳児2クラス58名を対象に,園における絵本体験とことばの力,及び家庭での読み聞かせ調査を以下の通り実施し,成果をまとめた. 1.研究経過(1)絵本体験:(1)保育(a)観察08年4月〜09年3月に計31回行った.(b)保育者への面接観察後,絵本環境や読み聞かせについて尋ね,学期終了時には観察記録をもとに意見交換を行った.(2)家庭家庭での絵本体験に関するアンケートを09年3,月に実施(回収35名,60.3%).(2)ことばの力:年度末,保育者と観察者双方が,幼児の「ことばの力」について7つの観点から評定を行った.2.主要結果(1)絵本体験:5歳児では全体的に,科学絵本を初めとする多様な絵本とのかかわりが園,家庭とも顕著に見られた.そうした中でも,保育者が絵本と子どもをつなぐ重要な役割を担っていることが引き続き確認され,特に幼児が園で自発的に手に取る絵本の7割は保育者が集団に対して読んだ絵本だった.抽出児の絵本体験は,家庭ではひとり読みの増加,園では友だち関係や遊び(特に戸外の遊び)の広がりに関連し,いずれの幼児も4歳時に比べ絵本に接する量が減少していた.(2)ことばの力:5歳児全般として特に3学期には,自分の名前は大半の幼児が書け,文字を使って手紙を書く遊びに従事する幼児も増えた.抽出児の絵本体験とことばの力は,4歳時点と同様,話しことばとの関連は見いだせなかったが,絵本体験の豊かな幼児の中には文字の読み書き能力の高い幼児も含まれており,書きことばとの関連は見られた.
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