1. 大学生に一番幼いときの出来事の記憶と一番幼いときにみた夢の記憶とを比較検討するたに昨年度行った調査の分析をおこなった。その結果、想起の際の視点が主観的な視点になるのか客観的な視点になるのか、近過去か遠過去かには一切無関係であった。また一番幼いときに夢の記憶と現実の記憶には相違点より類似が目立った。表象能力の発達を考えると、一番幼いときの記憶には、それが銘記された際の表象の特徴を持っていないことが明らかになった。 2. 2就学前児の夢理解に関するデータをまとめて分析を行った。その結果、欧米の夢の発達研究は、米の人たちが抱いている「夢理論」のバイアスの強く歪められていることが明らかになった。日本人の子どもたちは、そのような科学的な「夢理論」のバイアスを受けず、かなり素朴な経験主義的な形で夢概念を獲得している。私たちが採用している「現象学的質問法」は、素朴な経験主義的な方法であり、子どもたちの概念発達を調べるのに、Piaget(1929)やWoolley&Wellmanら(1992)の方法より、勝っていることが考察された。 3. 人々が夢という現象を自然科学的にとらえているのか、あるいはロマン主義的にとらえているのかを明らかにするために大学生20名ほどにインタビュー調査を行った。その結果が分析され、日本人の夢概念はロマン主義的な要素を引きずっていることが明らかになった。
|