研究概要 |
今日,乳幼児向けの英語教室が人気を集めている中,年少の子どもにおける英語経験の効果を評価するとともに,小学校で導入される英語活動へどのようにつなげていくのがよいかを考えることは,社会的に重要な問題である。本研究は,日本語を母語とする幼児にどのような英語の初期経験を与えると,その幼児の将来の英語の音韻学習能力が高まるのかを明らかにすることを目的としている。本年度は,昨年度に続いて,日本人幼児向けに作成した英語音韻の訓練プログラムを継続的に実施しするとともに,訓練プログラムが幼児の英語音声の知覚・処理に及ぼした影響についてこれまでの査定結果を総合的に分析し,訓練プログラムを受けていない日本人,中国人幼児のデータと比較した。訓練プログラム(多感覚統合メソッド)は,英語の音素を表現する手段として文字,絵,動作を学習し,それらの多感覚的な手段を用いて英単語の音声を分析したり,音素から英単語の音声に統合したりする活動を行うという方法である。分析結果から以下のことが明らかになった。 1、日本人幼児は,日本語のモーラのリズムで英語の音声情報を知覚するために,複雑な音韻構造の単語の発声に失敗する。 2、多感覚統合メソッドは,日本人幼児が苦手な複雑な音韻構造の1音節英単語の発声を促進する。 3、多感覚統合メソッドは,文字,絵,動作と音素との関連づけを十分に行う音声体験と組み合わせて,幼児期や小学校低学年での英語活動に取り入れることで,楽しく学びながら,日本語による英語の音韻習得の制約を回避し,その後の加速的な語彙の習得へつなげることのできる可能性がある。
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