研究概要 |
18年度では、日本語文章音読の特性分析、日本人学生の英語文章音読の特性分析、日本語文章音読と日本人学生の英語文章音読の比較対照、英語文章音読と日本人学生の英語文章音読の比較対照をおこなったが、それぞれをまとめ文章化した。また、18年度末に実施した吃音者の日本語音読における緊張と基本周波数(ピッチ)の関係について、本年度は、その展開研究として、同じ吃音者を対象に、A1-B1-A2-B1パラダイムを用いて、緊張の吃音に及ぼす効果の事例研究をおこなった。ここでは、A条件は、聞き手あり、B条件は、聞き手なし条件であり、それぞれの条件で日本語文章の音読が5回なされ、それぞれテープに録音された。録音された音読を16ビット、サンプリング22,000Hzでデジタル化し、スピーチアナライザーで、それぞれの文章における文節の基本周波数と吃音の有無を計測した。その結果、平均吃音数は、聞き手ありのA条件で高く、平均基本周波数は5Hz高いことが明らかになった。したがって、聞き手存在が吃音生起率を高めると同時に、吃音のない流暢発話においてもピッチを高くすると解釈できる。なお、予備的研究として、非吃音者を対象にしたA-Bパラダイムにおいて聞き手あり、なし条件と基本周波数の関係を調べたが、聞き手ありでは、逆に基本周波数が低くなる傾向を確認した。これら相反するように見える結果は、緊張、感情、基本周波数、吃音の関係が複雑であることを示唆し、今後の新たなテーマを提供することになる。 これらから音読学習および発音学習の部分的な示唆が得られるが、韻律のみならず、子音と母音の音響的、音声的な特徴の分析も必要となることが研究の過程で明らかになった。
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