本年度は、自閉的ファンタジーの特性に関するこれまでの研究結果を総括し、自閉的ファンタジーに対する支援方法について検討した。まず第1に、自閉的ファンタジーが出現する契機として、不安や不快を払拭するために防衛機制的な機能を持って出現する自閉的ファンタジーと、快の情動の昂進によって駆動される自閉的ファタジーの2種類があることがわかった。第2に、自閉的ファンタジーは、ネガティブな情動が随伴することの多いタイムスリップ現象とは異なり、総じい快の情動が随伴することが多く、その点では、遊び的な要素が強いものと考えられる。第3に、自閉的ファンタジーの内容は様々であるが、一様にかつて出現していた固執行動と直接・間接に関連していることから、自閉的ファンタジーの起源は、彼らのこだわり(固執)行動にあることが明らかになった。第4に、自閉的ファンタジーは、現実と虚構、合理と非合理の区別が明確でなく、いわゆるメタ・ファンタジー的な理解が希薄であることが特徴的であることがわかった。しかしながら、認知能力や社会性の発達に伴って、自閉的ファンタジーを対象化して捉えることが可能になると、ファンタジーが現実の自己を支える影の存在のように独自の世界として機能しはじめるようになることもある。第5に、自閉的ファンタジーの没入防止と離脱促進のための支援方法について一定の方向性を得た。今後の課題として、高機能広汎性発達障害児の生活世界における経験から自閉的ファンタジー生成されるプロセスを彼らの障害特性基盤として解明する必要がある。その際、先述したように自閉的ファンタジーは発達的に異なる様相を示すことから、発達に即した分析を行うべきであろう。その上で、自閉的ファンタジーに対する包括席な支援方法を開発する必要がある。
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